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近年、マイクロエレクトロニクスの集積回路故障メカニズムの理解とスクリーニングに始まり、医学分野では疾患の診断、そして歯1-3の修復材料の開発に至るまで、様々なアプリケーションで機械特性測定の重要性か明確になっています。一部のサンプルでは強く押されすぎると、表面が変形したり、表面の特性が変化したりと、測定の評価が不正確になる可能性があります。

Alvin Lee, John Paul Pineda, Byong Kim, and Keibock Lee Park Systems Inc., Santa Clara, CA USA

はじめに

近年、マイクロエレクトロニクスの集積回路故障メカニズムの理解とスクリーニングに始まり、医学分野では疾患の診断、そして歯1-3の修復材料の開発に至るまで、様々なアプリケーションで機械特性測定の重要性か明確になっています。一部のサンプルでは強く押されすぎると、表面が変形したり、表面の特性が変化したりと、測定の評価が不正確になる可能性があります。さらに、機能性材料の対象となるサイズと特徴はナノスケールレベルまで継続的に縮小しており、材料の故障は原子格子構造から始まるため、その特性評価に使用される従来の手法では、表面の欠陥や異常を特定するのにもはや十分ではなく、ミリメートル範囲の測定のみが可能です。これらの理由からナノスケールの測定を可能にする優れた次世代の特性評価ツールが大いに必要とされています。最近、PinPoint™ナノメカニカルモードという新しい測定モードがパーク・システムズによって開発され、これらの問題に対する革新的なソリューションを提供することができています。この技術は、わずか数ナノニュートンの力でチップをアプローチ、リトラクト方式で動作させ、摩擦のない動作を保証します。また、チップとサンプルの連続的な接触による横方向の力を排除することで、チップとサンプルの状態を維持します。画像の各点で、フォースディスタンスカーブが取得され、サンプルの機械特性を計算するために使用されます。データ取得中、XYスキャナは停止し、接触している間は、スキャナがナノスケールの解像度で正確なデータを取得するのに十分な時間を与えるように制御されます。自然な環境に保つと、すべての材料構造は時間の経過とともに劣化しますが、このような変化は、ナノスケールレベルでの欠陥に起因します。これが、歯のホワイトニングプロセスにも当てはまります。歯を白くするのには、あまり頻繁にホワイトニング繰り返さずに白いままを維持したいと誰もが思うはずです。これを実現するには、トポロジカルおよび機械的変化がナノスケールレベルで歯の表面でどのように発生しているのかを知る必要があります。この研究では、PinPoint™ナノメカニカルモードを使用して、歯のトポグラフィーおよび機械特性データを取得し、歯の機械およびトポグラフィー特性に対するホワイトニングストリップの影響を調べました。その結果、ホワイトニングストリップが歯の粗さの減少と弾性率、凝着力の増加につながることがわかりました。Park Systemsによって新しく開発されたこの技術により、ナノスケールレベルで様々な種類のサンプルのトポグラフィーや機械特性の変化を調べることができます。

実験

Park NX10 AFM5を使用して、大気中で歯のサンプルを分析しました。AC160TSチップによるPinPoint™ナノメカニカルモードを(公称値:バネ定数 k=26 N/mおよび共振周波数= 300 kHz)6、トポグラフィーおよび機械的信号を取得するための測定に使われました。AFMスキャンを行う前に、歯を脱イオン水に入れて処理し、30分間放置した後、50%のイソプロピルアルコールに2分間入れてから、再び脱イオン水ですすぎ、圧縮エアスプレーでサンプルを乾かしました。これは、時間の経過とともに歯に蓄積した可能性のある破片や汚れを歯から取り除くために行われ、図1は、実験のセットアップを示しています。カーボンテープと瞬間接着剤を使い、イメージング中のサンプルを安定に保つために試料用円板にカーボン両面テープで貼り付けました。爪楊枝を置いて歯を上向きに保ち、測定のために測定領域が水平になるようにしました。

 

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図1:実験のセットアップ。Park NX10 AFMシステムにセットアップされた歯(左)。AC160-TSチップがサンプルにアプローチ(右)。

取得したモジュラス値を検証するために、リファレンスサンプルを使用しました。サンプルはPS-LDPEブレンドフィルム(ポリスチレンとポリオレフィンエラストマー)です。モジュラス測定値は、PSマトリックス部で約2.0GPa、マトリックスにブレンドされたモジュラス画像の円形部で約0.1GPと測定され、PS-LDPEサンプルのメーカーの説明と一致していました。図2は、PS-LDPEリファレンスサンプルの15 x 15 µmのモジュラス画像を表しています。この画像は、取得した信号をカラーテーブルにマッピングするPark XEI解析ソフトウェアで分析されました。暗く表示されている丸い領域 (図2左のイメージの黒い部分)は、モジュラス値が低いことを示し、その周辺の平な部分はPSのマトリクスで、モジュラス値が高いことを示します。また、紫色の領域は、PS部分を除外してLDPEのみの弾性率を計測することを意味します。同じ方法でLDPE部分を除きPSのみを計算すると、それぞれの材料の平均値は、LDPEは、0.116GPa、PSは2.039GPaであることがわかります。

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図2:PS-LDPEリファレンスサンプルの15 x 15 µm イメージ。弾性率平均計算でポリスチレン平坦領域を除外したイメージ(左)。弾性率平均計算で共重合体領域を除外したイメージ(右)。

リファレンスサンプル測定後に同じプローブを使用して、歯をPark NX10にセットしました。統計的な有意性のために、Park AFMに組み込まれている光学顕微鏡を使用して同じ歯のサンプルにおいて三つの異なる表面でそれぞれ3回ずつ測定しました。500ミクロン以内の間隔で、ほぼ同じ領域の測定が行われました。また、測定はPS-LDPEリファレンスサンプルに使用されたものと同じスキャンパラメータを使用しました。これらのパラメータ条件下で、AFMが正確なモジュラス値を示したからです。歯のサンプルを白くするために、ホワイトニングストリップを使い8、一時間放置しました。この後、歯を脱イオン水ですすぎ、圧縮エアスプレーで乾燥させました。合計三つのホワイトニングストリップが最終ホワイトニングとして使用されました。

結果と考察

実験で取得した代表的なトポグラフィーおよび機械特性の画像を表1に表しました。Park XEI解析ソフトウェアを使い画像を分析し、弾性率の定量結果を表2に表しました。ホワイトニングプロセス前後の弾性率の実験値は、以前の研究と比較することができます2。歯は、エナメル質、象牙質、セメント質として知られる三つの主要な層で構成されています。これら層はそれぞれの順序で見られます;表面のエナメル質、エナメル質の下の象牙質、その下のセメント質の順です。また、既存の研究に基づき、歯の最表層の弾性率は、1.3382 ± 0.3079 Gpaであることがわかりました。ホワイトニング前の弾性率の測定値は1.072GPaでしたが、ホワイトニング後は1.571GPaまで増加しています。同じ傾向が凝着力値でも観察され、ホワイトニング前の凝着力の測定値は0.196fJだったのに対し、ホワイトニングの後に1.608fJと増加していました。一方、表面粗さは減少する傾向にあることがわかりました。ホワイトニング前は、201.0 nmでしたが、ホワイトニングストリップ適用後の表面粗さは38.33 nmと減少していました。ホワイトニングストリップによる歯のホワイトニングは、ストリップ上の水酸化物を歯の表面の色素体として知られる染色分子と反応させることによって機能します。この反応は酸化として知られており、これによって水酸化物から電子を獲得する時に色素体分子が分解され、光を反射しない分子に分裂し、歯から取り除くことができます。これまでの研究では、ホワイトニング処理を重ねて施すと、硬度が低下し、粗さが増すことが想定されていました9-10。しかし、この実験では、粗さが減少し、弾性率が増すことがわかりました。考えられる理由は、水酸化物による酸化で、染色色素体分子が歯から除去されるため表面が滑らかになり、色素体はエナメル質自体よりも弾性率が低いため、弾性率が増加したと考えられます。

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表1:ホワイトニング処理前後のイメージ一覧。スキャン領域:15 x 15ミクロン。データ値が平均値とほぼ一致したため、ホワイトニング処理によって引き起こされた変化を表しています。スケールバー:3 µm

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表2:ホワイトニング前と3回目および最後のホワイトニングの平均値。

まとめ

歯のサンプルのトポグラフィーと機械特性データは、Park AFM NX10のPinPoint™ナノメカニカルモードを使って取得しました。PinPoint™ナノメカニカルモードを使って、歯の機械特性を特徴づけるその方法が、マクロやマイクロインデンテーションなどの他の方法で見られる機械特性と一致することがわかりました。 また、ホワイトニング処理後、歯の表面粗さが減少し、弾性率および凝着特性が増加することもわかりました。Park SystemsのPinPoint™ナノメカニカルモードは、ナノスケールで機械特性を特性評価および定量化するための理想的なアプローチであり、摩擦のない動作により、速いスキャンスピードとチップの寿命を最大に延ばします。

参考文献

1. J. Vella, et al., Mechanical properties and fracture toughness of organo-silicate glass (OSG) low-k dielectric thin films for microelectronic applications, International Journal of Fracture 119/120: 487–499, 2003.
2. M. Oyen, et al., A practical guide for analysis of nanoindentation data, J Mech Behav Biomed Mater. 2009 Aug;2(4):396-407. doi: 10.1016/j.jmbbm.2008.10.002. Epub 2008 Oct 15.
3. Y.Zhang, et al.,Review of research on the mechanical properties of the human tooth, Published online 2014 Apr 18. doi: 10.1038/ijos.2014.21.
4. https://www.parksystems.com/index.php/company/news/press-release/450-nanome chanical-mode-to-characterize-nano-mechanical
5. https://www.parksystems.com/index.php/products/small-sample-afm/park-nx10/overview
6. http://probe.olympus-global.com/en/product/omcl_ac160ts_r3/
7. https://crest.com/en-us/products/whitestrips/crest-3d-white-monthly-whitening-boo st-whitestrips-teeth-whitening-kit
8. K. Chun, et al., Comparison of mechanical property and role between enamel and dentin in the human teeth, Published online 2014 Feb 6. doi: 10.1177/1758736014520809
9. C. Pinto, et al., Peroxide bleaching agent effects on enamel surface microhardness, roughness and morphology, Braz. oral res. vol.18 no.4 São Paulo Oct./Dec. 2004.